孤城閉〜仁宗、その愛と大義〜

2020年「清平楽」

天下人でありながら何かと不自由な生活を送るが、自分の境遇を嘆くのみでは終わらず、なすべき事に向き合い続けた皇帝の物語。
…とは言っても完璧な聖人君子というわけでははない。
美女には甘いし、その他にも主人公・趙禎にイライラさせられる場面は多いのだが、幼い頃は嫡母に政治の実権を握られ、親政開始後は廷臣たちにこと細かく政策のダメ出しをされながら、普通の人たちの幸せを最優先に考え、日夜苦心し続ける姿には心打たれる。
(善意でやった事で相手を苦しめる結果になり、
後で知って落ち込む場面も…。)

そして、もう一人の主人公とも言うべき曹皇后。
慕っていた趙禎に嫁げて喜んだのも束の間、自分は妻ではなく国母なのだと思い定めるに至り、その後ずっと趙禎とすれ違い続ける。彼女が完璧な皇后であろうとすればするほど、趙禎は皇后に安らぎを感じにくくなる。
皇后の不器用な愛情表現を見ると、趙禎と似た者夫婦に見える。強過ぎて、完璧過ぎて、なかなか幸せになれない皇后。

そんな二人とは裏腹に、趙禎の寵妃・張妼晗は我を通していく。
彼女は富貴は望まない。望むのは趙禎の愛のみ。趙禎の最愛の女であると自認し、それを阻む者に容赦しない態度はある意味、小気味いいが、皇后や皇女・趙徽柔にまで危害を加えようとするのはやり過ぎと思う。

そして張妼晗と渡りあえる怖いもの知らずが趙徽柔。
徽柔の母・苗氏は子らの母としての役割に、皇后は国母としての役割に徹しており、妼晗のようなやべえ奴と正面衝突はしないが、趙禎の子供らの中でも特に可愛がられた徽柔は妼晗への敵意を隠さない。
物語の後半で趙禎とも対立していくが、なんかファザコンの裏返しのような気もする。御釈迦様の掌上で暴れる孫悟空のように父に反抗する徽柔。儒学者・司馬光を論破したつもりが、存在しない記録を根拠とした事で相手にさらなる攻撃の機会を与え、父に助けられる。
(コンプライアンス重視の司馬光はその後、資治通鑑を書く際に別件で徽柔についてボロクソ書くが。)
彼女の言動は思慮に欠けているのだが、おかしい事をおかしいと素直に訴え続ける姿を見ていると感情移入したくなる。

この破天荒な姫君に命を賭して仕え、許されぬ想いに苦しむ梁懐吉。運命に翻弄され幼くして宦官となり、大人たちの都合で危険に晒される。
彼は自分の身を顧みず、いつも他者のために行動している。徽柔に仕える事については彼自身も望む事だが、これにより彼はまた危険に巻き込まれる。

梁懐吉の師匠で、皇后に密かな想いを寄せるのは張茂則。文武両道の有能な宦官で趙禎が幼い頃から側で支え続け、誰よりも信頼されている。普段は冷静沈着で判断も正確だが、張妼晗の腹心・賈玉蘭の企みを暴く際には感情に溺れ失敗して深く後悔する。

張茂則と同じく、ごく若い趙禎を知る官僚が韓琦。宮中で育った趙禎は韓琦との出会いで初めて市井の人々の生活を知り、皇帝がすべき事に目覚めていく事となる。立場を超えた率直な意見を趙禎に聞かせてくれる、貴重な存在。

ここで挙げた以外の人物たちも描写が奥深い。比較的平和な時代というのは描きづらいのではないかと思っていたが、最後まで飽きさせない作品だった。

大梁:宋の首都・開封

史実

▶︎その頃の日本
1016年  藤原道長が摂政となる

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